被疑者(容疑者)保護と憲法との関係について(その3)~人身の自由の基本的知識について~

 

 

 

今回も、引き続き、人身の自由(身体の自由)について書いていきたいと思います

 

憲法第33条では、

 何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。

と規定されています。

 

そして、この条文でいう司法官憲は、具体的には裁判官のことを意味しています。

 

この、憲法第33条を受け、つまり、「恣意的な人身の自由の侵害を阻止するため(注1)」刑事訴訟法第199条で、裁判官の発行する逮捕状によって逮捕する旨が規定されており、同法第200条では逮捕状の記載事項が規定されています。


ただ、緊急逮捕の規定について、刑事訴訟法第210条第1項では、

 

検察官、検察事務官又は司法警察職員は、死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由がある場合で、急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないときは、その理由を告げて被疑者を逮捕することができる。この場合には、直ちに裁判官の逮捕状を求める手続をしなければならない。逮捕状が発せられないときは、直ちに被疑者を釈放しなければならない。

 

と規定されています。

 

つまり、逮捕状なしに逮捕できるという緊急逮捕の規定が存在しているのです。

 

この条文が、憲法第33条に違反して、憲法違反となるのかどうか問題となるのですが、判例の考え方は以下の通りです(昭和30年12月14日最高裁判例)

 

~引用開始~
「刑訴二一〇条が、検察官、検察事務官又は司法警察職員に対し逮捕状によらず被疑者を逮捕することができることを規定しているのは憲法三三条に違反するというのである。
しかし刑訴二一〇条は、死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪を犯したことを疑うに足る充分な理由がある場合で、且つ急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないときは、その理由を告げて被疑者を逮捕することができるとし、そしてこの場合捜査官憲は直ちに裁判官の逮捕状を求める手続を為し、若し逮捕状が発せられないときは直ちに被疑者を釈放すべきことを定めている。かような厳格な制約の下に、罪状の重い一定の犯罪のみについて、緊急已むを得ない場合に限り、逮捕後直ちに裁判官の審査を受けて逮捕状の発行を求めることを条件とし、被疑者の逮捕を認めることは、憲法三三条規定の趣旨に反するものではない、されば所論違憲の論旨は理由がない。
~引用終了~

 

 

つまり、逮捕後に直ちに逮捕状を求め、逮捕状が発せられないときは直ちに被疑者を釈放するという厳格な条件があるため、33条の趣旨に反しないため合憲であるとの判断を下しています。

 

注1:憲法 第4版(岩波書店 芦部信喜・高橋和之)より

注2:刑事訴訟法参考条文

第百九十九条
  検察官、検察事務官又は司法警察職員は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕することができる。ただし、三十万円(刑法 、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、二万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪については、被疑者が定まつた住居を有しない場合又は正当な理由がなく前条の規定による出頭の求めに応じない場合に限る。
○2  裁判官は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があると認めるときは、検察官又は司法警察員(警察官たる司法警察員については、国家公安委員会又は都道府県公安委員会が指定する警部以上の者に限る。以下本条において同じ。)の請求により、前項の逮捕状を発する。但し、明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、この限りでない。
○3  検察官又は司法警察員は、第一項の逮捕状を請求する場合において、同一の犯罪事実についてその被疑者に対し前に逮捕状の請求又はその発付があつたときは、その旨を裁判所に通知しなければならない。

第二百条  逮捕状には、被疑者の氏名及び住居、罪名、被疑事実の要旨、引致すべき官公署その他の場所、有効期間及びその期間経過後は逮捕をすることができず令状はこれを返還しなければならない旨並びに発付の年月日その他裁判所の規則で定める事項を記載し、裁判官が、これに記名押印しなければならない。

 

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